声明
「新たな労働時間規制の適用除外の枠組み」の導入に反対する
 
2006年11月10日
労働者住民医療機関連絡会議
議 長 斎藤 竜太
 

 戦前、労働時間の規制がなく多くの労働者の命と健康が奪われた。その反省の上に
立ち、1947年労働基準法が制定され、1日8時間労働の規制が設けられた。そして今、
1日8時間以内、週40時間以内という労働時間の規制により労働者が安全・健康に働く
権利が守られている。ところが、この労働時間の規制を取り払おうとする法律が労働
政策審議会で議論されており、労働基準法改正案と労働契約法案として来年の通常国
会に上程しようと厚生労働省が目論んでいる。そもそもこれは、アメリカのホワイト
カラーイグゼンプション(免除)制度を参考にしたもので、規則で規定された労働者
に対して労働時間規制が適用されないという、簡単に言ってしまえば、使用者の思う
がままに労働者をいくらでも働かせることができるという制度である。労働者にとっ
てとても容認できるものではなく、審議会の労働側の委員も当然反対の意見を述べ
闘っている。
 長時間労働による過重な負荷により血圧の上昇、血管の収縮、糖尿病や高脂血症の
増悪などがもたらされ、脳血管疾患や虚血性心疾患が引き起こされることは周知の事
柄であるが、長時間労働が精神疾患の発症に関連があることも大いに考えられる。厚
生労働省の委託研究報告書でも、「長時間残業による睡眠不足が精神疾患発症に関連
があることは疑う余地もなく、特に長時間残業が100時間を超えるとそれ以下の長時
間残業よりも精神疾患発症が早まる」との結論が出されている。100時間で区切られ
るものかどうか、睡眠不足だけが問題なのかどうかは更に調査が必要であろうが、長
時間労働が精神疾患発症に関係するのは明らかであろう。
 すでに日本では長時間労働が常態化しており、ここ数年いわゆる「過労死」あるい
は「過労自殺」と言われる過重労働による脳血管疾患や虚血性心疾患、うつ病や自殺
などの精神障害の労災認定件数が増え続けている。2005年度で、脳・心臓疾患は330
人(申請869人)で過去最高、精神障害は自殺42人を含む127人(申請656人うち自殺
147人)で2004年度に次いで2番目であった。また、厚生労働省の集計で、2004年に不
払い残業に対する是正指導が2万299件(前年比1788件増)に上っている。競争激化の
中でなりふり構わない企業の中で、すでに労働基準法を無視した長時間労働が罷り
通っているのである。
 今進められようとしている労働時間規制の適用除外は、まさにこの現状を追認し、
合法化し更に推し進め、経営者の思うがままに労働者を働かせようというものに他な
らない。対象労働者の要件を設けているが曖昧な部分が多い。例えば、物の製造の業
務に従事する者等を除外する規定があるが、逆に製造業以外なら適用になるというこ
とで、ホワイトカラーに限らずサービス業や福祉関係の労働者など広範囲の労働者に
適用される。私たち医療従事者も当然対象になる。現在でもすでに医師は適用除外の
状態であり、特に研修医は低賃金、長時間労働が当たり前になっていて、関西医大に
おける研修医の過労死裁判以降改善されてきているとはいえまだまだ不十分である。
また、使用者の労働時間の管理がルーズになる可能性が大きく、過労死などの労災認
定が更に困難になることも考えられる。長時間労働による健康障害を防止するために
は、むしろ労働時間の規制を厳しくするのが本筋であるし、職場における人員の数と
配置や業務量の問題を改善するのが先決であろう。
 以上のような労働時間の新たな適用除外制度の導入に、労働者の命と健康を守る立
場から労住医連は断固反対する。