●10月24日要請行動概要


10月24日、「過重労働により健康や命を脅かされる体験をした労働者とその家族」有志
が、「労働時間規制の新たな適用除外制度(日本版エグゼンプション)の導入に反対」
する要請行動を行った。

要請に名を連ねたのは後掲のとおり18事件の労働者・家族、そのうち13事件の15名が、
以下の日程のこの日の行動に参加した。東京、神奈川、千葉のほか、群馬、静岡や愛知
からの方もいた。

12:30〜13:30     連合会長要請(三役会議室)
14:00〜14:40     厚生労働大臣・労働条件審議会労働条件分科会長宛て要請
                  (厚生労働省会議室)
15:45〜16:45     記者会見(厚生労働省記者クラブ)

連合への要請には、高木剛・会長以下、山口洋子・副事務局長、長谷川裕子・総合労働
局長(労働条件分科会労働者委員)、江畑弥八郎・雇用法制対策局長、同局二片すずさ
んの5名が対応。


要請者を代表して五十音順でトップの秋山光夫さんから高木会長に要請書(4〜7頁囲み
参照)を手渡し。また、要請者の何名かが用意してくれたご自分の体験や要望を書いた
文書、東京過労死を考える家族の会の中心メンバーでもある要請者のおひとり(匿名希
望)がとりまとめてくれた全国と各地の家族の会の要請文(4〜7頁囲み参照)等もお渡
しした。続いて15名が自己紹介。一人当たり平均すると二分ほどの短時間で、各々の実
体験とそれを踏まえて日本版エグゼンプションの導入は絶対に許してはいけないという
切実な思いを訴えた。
高木会長からの発言の概要は以下のとおり。
「ご要請の趣旨は承った。連合から労働政策審議会労働条件分科会に委員を出している
ので意向に沿って対応していきたいと思う。
訴えがあったように、非常に過重な時間外・休日労働がますます増えるという流れがま
だ止まっていない。最近厚生労働省が発表した労働時間統計でも、20代後半から30代の
正社員の人たちの2割以上が、週60時間以上働いている。月にすると時間外労働だけで
100時間近い。割増賃金を払わない不払い残業が年間数万件に及んでいるという状況も
報告されている。
日本の労働時間に関する法律は直接規制型で1日8時間、週40時間等と規制している。た
だ1日実働10時間以上は働かせてはいけないと定められているドイツやフランスなどと
違って、1日の上限時間が決められていない。日本の場合は、労使で時間外・休日労働
協定を結んでコントロールしようということになっている。ところが最近これは私たち
労働組合の怠慢もあるのだが、36協定の内容がルーズになっている。そういうことで過
重な時間外労働をする労働者が増えている。そういう意味では労働組合にも大きな責任
があるんじゃないか。労働時間の実態について、そんな議論もいましている。
ホワイトカラー・イグゼンプションというのはアメリカの制度で、アメリカには労働時
間に対する法律の規制がほとんどない。1日8時間を超えた分については、割増賃金を払
えということしかない。日本の労働時間法制とは体系が違う。そのアメリカの仕組みを
そのまま日本に持ってきて、そのもとできちんと秩序がつくれるとはとても思えない。
会社に対する批判の声が出されたが、例えば日本経団連という経営者の団体がホワイト
カラー・イグゼンプションの導入が必要だと言っている。私どもから言わせたら、こん
なに時間外労働が多い労働者が多いなかで、会社は史上空前の利益、そこで働いている
労働者はへとへと、そういう状況を改善する努力もしないで、労働時間管理の対象から
外す労働者の数を増やせという。自分たちがすべきことをしないで、より使いやすい労
働者をという法律は本末転倒、おかしいんじゃないか。やるべきことやってから言うな
らまだ議論のしようもあるが。それから日本の労働者とヨーロッパの労働者は時間外労
働に対する感覚がかなり違う面もあるが、時間外労働に対する会社の管理と労働者自身
の意識の問題、両面から考えていかなくてはいけないと思うが、ともかくこういう時間
外労働の実態を放置したままイグゼンプションの対象を増やせというのはまったくすじ
の通らない話だと思っている。
一番気の毒なのは中間管理職の人たち。労働時間管理の対象からは外される。かといっ
て本当に自分自身の裁量で仕事ができるような環境にはない。まさに板挟みのような働
かされ方をされ、最近は成果主義賃金とか言って成果が上がらないやつは賃金も上がら
ないというような仕組みもあるなかで、しかも労働組合員でない場合が多いから、労働
組合の手の及ばない部分が中間管理職にあったりして、大変気の毒なことになっている。
また、裁量労働制に関する2、3の調査をみても、裁量労働制は基本的には時間外に及ぶ
と思われる労働時間を増やしているとする調査がある。
日本の社会でホワイトカラー・イグゼンプションが入れられることになったら、時間管
理がない場所で働く人が一層増えてしまう。まだ労働条件分科会で論議の途中ではある
が、今日申し上げたような問題点の整理がつかないようなホワイトカラー・イグゼンプ
ションを認めるわけにはいかないと思っている。場合によっては国会にまで行って騒動
しなければならないかもしれないが、まずは審議会の段階で頑張っていきたい。」
また、連合のアメリカへの「ホワイトカラー・イグゼンプション調査団報告書」等も参
考にしてもらいたいということ(連合のホームページ上に「労働者のための労働契約法
・労働時間法制の実現を!」のコーナーがつくられ、他の情報・資料等とともに入手で
きるようになっている。
http://www.jtuc-rengo.or.jp/roudou/seido/roudoukeiyaku/index.html)や、各地の
連合の電話相談に家族からの相談も寄せられるようになっていること、近々11月に労働
時間問題の連合の新聞広告を出す、10〜12月の3か月間各地方連合会で該当宣伝・チラ
シ配布、12月8日には連合主催の集会・行動等を予定していることなども紹介され、要
請者との間で意見交換も行われた。



厚生労働大臣・労働条件審議会労働条件分科会長宛ての要請(要請文は5頁の囲み参照)
に対しては、分科会の事務局も担当している同省労働基準局監督課の係長ら2名が対応。
連合のときと同様、まず要請者側が自己紹介を含めて発言したが、厚生労働省側の対応
は、「現在労働条件分科会で公労使の代表によって審議されているところなので、その
結果を踏まえて適切に対処していきたい」、「要請の内容については、(大臣、分科会
長に)必ず伝える」というもの。
参加者からは、「これだけの当事者がわざわざ出向いているのに、大臣も分科会長も出
てきて話を聞こうとしないということ自体が不真面目。きちんと伝えたら、会って話を
聞こうということになるのが当然だろう」など、検討にあたって健康被害の当事者の声
を確実に反映させるよう求める声が相次いだ。分科会で意見を聴きたいということにな
れば、今日の要請者で都合のつく者は喜んで話をするということも申し添えた。
とりわけ、労働基準法改正法案を次期通常国会に提出することになった場合、同省はパ
ブリック・コメント手続も行わない方針と伝えられていることにふれて、「そのような
国民の声を無視したやり方は絶対に認められない」と釘を刺す発言もあった。
「この制度が導入されたら労働基準監督署は一体どのように労働時間を管理するのか」
という質問に対して、沈黙の後、「いまの段階で確たることは言えないが、いわゆるホ
ワイトカラー・エグゼンプションは、ごく限られた範囲の人を対象に(導入が)できな
いかということで現在検討している。ホワイトカラー労働者一般、全体を対象にすると
は分科会のなかでも出ていない」。「では、どのような人を対象にしているのか」。
「具体的にはまだ出てきてはいない…」。「出てきていないのに、なぜそんなことが言
えるのか」……「これまでの分科会の議論では、労働者側委員から、日本版エグゼンプ
ションの導入を必要性としているという納得のある説明がなされないのでは、導入の条
件についての議論はしないという話になっている」と指摘されると、うなずきはするも
ののその後の返答はなし、という具合だった。

厚生労働省記者クラブでの記者会見は熱気のあるものだったと思う。この日、各要請者
が各々の場で発言された内容は、すべて実体験に基づいた迫力のある、聞く者の心に訴
えるものであり、機会があればぜひご紹介したい。
TBS、NHKのテレビ放送のほか、新聞各紙がこの日の行動を報じてくれた。

同じ24日の17時からは第66回労働条件分科会が開催された。この日は、主に有期労働契
約と管理監督者の労働時間問題が取り上げられた。9月11日の第61回分科会で事務局か
ら示された「労働契約法性及び労働時間法制の今後の検討について(案)」(11月号28
頁参照)に掲げられた論点の議論が一巡し終わる予定であったが、次回11月10日の第66
回分科会では、裁量労働制等一部積み残しの論点とともに、議論は次のステージに移行
することが予定されている。11月にも3回の分科会を開催し、12月中に何とか建議?を
まとめて、次期通常国会に関連法案を上程するという厚生労働省の意志は変わっていな
いものと考えられる。

日本版エグゼンプション―「ホワイトカラー労働者の自律的な働き方を可能とする制度
の創設」が俎上にあげられた分科会の議論では、労働者委員は、「新たな適用除外制度
の創設を必要としているという納得のいく説明がなされていない。それなしには創設の
条件の話などできない。そのような働き方を希望している労働者がいるのだと言われる
が、それならばそういう方たちを分科会に呼んでヒアリングをしよう」と提起している。
いま、まさに「健康被害の当事者」という立場から「導入に反対」の声があげられたわ
けであるから、厚生労働省は賛成・反対双方の当事者の声が審議に反映される道を確保
すべきであろう。
この問題は、分科会―審議会という一種の「密室」の中の議論ですまされるわけにはい
かない問題―労使だけの問題でもなく、家族も含めた社会全体に関わる大問題なのであ
る。


    ●連合会長への要請文

2006年10月24日
日本労働組合総連合会
        会長 高 木 剛   殿

労働時間規制の新たな適用除外制度(日本版エグゼンプション)の
導入には絶対に反対です!

私たちは、過重労働により健康や命を脅かされる体験をした労働者とその家族です。脳・心
臓疾患や精神疾患等を発症した患者・家族、さらには過労死や過労自殺というかたちで、最
愛の家族を失った者も少なくありません。そのような過重労働に対してまったく残業代が支
払われないことに対して、その支払いを求めて裁判を闘っている者もいます。
長時間労働、要求のみ過大で自律性もサポートもない働かされ方の増大が、過労死、過労自
殺、過重労働による脳・心臓疾患や精神疾患等を増加させており、このような事態を早急に
是正することこそが、現在の労働時間問題において最優先で検討されるべき課題であると信
じます。私たちの苦しみや悲しみを、二度と繰り返してほしくないのです。
いま労働政策審議会で労働基準法の見直しが審議され、労働時間規制の新たな適用除外制度
(日本版エグゼンプション)の導入が提案されていることを知り、居ても立ってもいられず
に、連絡を取り合うことのできた有志で、この申し入れをさせていただくことになりました。
長時間労働が、脳・心臓疾患や精神疾患等の重大な原因であることは、疑いの余地がありま
せん。厚生労働省が参集ないし委託した研究結果でも、例えば次のような指摘がなされてい
ます。
        「疲労の蓄積の最も重要な要因である労働時間に着目すると、発症前1か月前にお
おむね100時間を超える時間外労働が認められる場合、発症前2か月ないし6か月にわたって、
1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と(脳・心臓疾
患)発症との関連性は強いと判断される。」(2001年脳・心臓疾患の認定基準に関する専門
検討会報告書)。
        「長時間残業による睡眠不足が精神疾患発症に関連があることは疑う余地もなく、
特に長時間残業が100時間を超えるとそれ以下の長時間残業よりも精神疾患発症が早まると
の結論が得られた。」(2004年精神疾患発症と長時間残業との因果関係に関する研究報告書)
これらの科学的知見は、徐々に労災補償行政に活かされるようになってきてはいますが、本
来、予防対策―労働時間行政、労働安全衛生行政において、より積極的に取り入れられるべ
きではないでしょうか。
働く者の健康と命を守る立場からは、労働時間を平均値のみで語るわけにはいかないわけで
すが、平均値でみても日本の労働者の長時間労働が裏づけられ、また、現行労働基準法によ
って労働時間規制の適用除外や裁量労働制の対象とされ得る、管理監督職や専門技術職等に
平均を上回る長時間労働の実態やストレス等の訴えがあり、それらが悪化する傾向さえみら
れることを裏づける統計データも存在しています。
実際、労災認定される脳・心臓疾患等、精神障害等の事例が増大し続けるなかで、職種別で
みると、管理職が21.3%と14.2%、専門技術職が14.0%と28.2%と、いずれも上位を占め、
脳・心臓疾患等では管理職が第1位、精神障害等では専門技術職が第1位となっています。
こうした数字は、現行法のもとにおける適用除外制度等が、十分に働く者の健康や命を守れ
る仕組みになっていないことを物語るものでもあります。合法的に労働時間規制が適用除外
される管理監督者であっても、あるいは「裁量にゆだねられた」労働者であっても、まさに
「自律的でない長時間労働やストレス」を強いられているからこそ過労死等が発生している
ことを、私たちは知っています。したがって、労働時間規制の適用除外の対象となる管理監
督者の要件を厳密化・周知徹底することを望むとともに、管理監督者の範囲の拡大や裁量労
働制の導入要件の一層の緩和、裁量労働制適用労働者の新たな適用除外制度への移行には、
絶対に反対です。
また同時に、法が要求する要件を満たさないにも関わらず労働時間規制の適用除外や裁量労
働制の扱いがなされている実態が多々あること、及び、上述の脳・心臓疾患や精神障害等の
労災認定事例にはそうした労働者も含まれていることも、私たちは知っています。とりわけ
名目上だけの管理監督者とされて、「自律的でない長時間労働」を強いられて健康を損ない、
あるいは死に追いやられるという事例が増えてきているのではないかと危惧しています。企
業が管理監督者につききわめて広く拡大解釈していることを裏づける、厚生労働省委託調査
もあります。このような労働者は、議論されている新たな適用除外制度(日本版エグゼンプ
ション)が導入された場合に、まっさきにその対象とされて、違法状態を合法化されること
になるのではないでしょうか。
それだけではなく、この間の使用者側の意見等を踏まえれば、概念の曖昧な(厚生労働省の
説明によれば全労働者の過半数にもなる)「ホワイトカラー労働者」全般、また、「ホワイ
トカラー」に限定されない労働者全体がひろく、新たな適用除外制度の対象となり得ること
が想定されます。いったん制度として導入されれば、適用に当たっての要件は、企画型裁量
労働制の場合のように、今よりもたやすく変更・緩和が可能となるでしょう。さらに、新た
な適用除外制度の導入を口実にした、違法な労働時間規制無視が一層ひろがることも、確実
と言わざるを得ません。
長時間労働や達成を要求される仕事の量・質が過重になりすぎることに対する抑制策、有効
なサポート、その他の自律的な働き方を保証する仕組み(導入要件としての「健康確保措置」
等のことを言っているのではありません)を欠いたまま、労働時間規制だけを外すことは、
たんに労働時間管理についての「自己責任」を押し付けられるだけにほかならず、これを
「自律的な働き方を可能とする制度」と称していることに対しては、憤りを感ぜざるを得ま
せん。新たな適用除外制度(日本版エグゼンプション)の導入は、「自律的でない長時間労
働やストレス」を一層蔓延させ、過労死、過労自殺、過重労働による脳・心臓疾患や精神疾
患等の一層の増加につながります。
現実には、合法か違法かを問わず長時間働かされて過労死等が発生してしまった場合、使用
者が労働時間の把握をしていないために、いつ、どれだけ、どのように仕事をして発症した
のかを、患者やその家族が立証できなければ、最低限の労災補償すら受けられないという事
例が明らかに増えています。新たな適用除外制度の導入は、この面でも事態を一層悪化させ
ることが確実です。現行法のもとでの適用除外や裁量労働制等の場合を含めて、使用者によ
る労働時間把握義務を課し、その遵守を徹底することは、個々の労働者とその家族にとって
だけでなく、国の労働時間・安全衛生対策にも資するものであり、その実現を強く望みます。
「自律的でない長時間労働やストレス」が、労働者の心身の健康を損なうだけでなく、家族
との関わり、社会的な生活(労働組合活動もそのひとつです)を奪い、最悪の場合に―しか
し決して稀なことではなく―過労死・過労自殺というかたちの死をもたらす。その被害者は、
労働者本人にとどまらず、その家族、友人、そして社会全体です。個別企業内や産業界、あ
るいは政労使代表で構成される審議会の枠内だけにとどまる問題ではありません。だからこ
そ私たちは、あえて声を上げさせていただきました。
過労死・過労自殺等の増大につながる、労働時間規制の新たな適用除外制度(日本版エグゼ
ンプション)の導入には、絶対に反対です!働く者とその家族、幅広い人々が力を合わせて、
その導入を食い止めるとともに、過労死やストレスに脅えることなく健康に生活し、安心し
て、希望を持って働けるルールをつくりあげていくよう訴えるものです。
審議会の場で労働者代表委員の皆様方が、私たちと同じ立場にたって奮闘されていることに
心から敬意を表し、感謝するとともに、私たちの願いを切実に受け止めていただき、貴職、
労働者委員の皆様、そして連合として、一層のご尽力を賜りますようお願い申し上げる次第
です。
×                       ×                       ×                       ×                       ×

●厚生労働大臣への要請文

2006年10月24日
厚生労働大臣 柳 澤 伯  夫   殿
労働政策審議会労働条件分科会 分科会長  西 村 健一郎   殿

【厚生労働大臣・労働条件分科会長宛て要請書は、最後の二段落が
以下のとおりになる他は、連合会長宛てと同文です。】

私たちは、過労死・過労自殺等の増大につながる、労働時間規制の新たな適用除外制度(日
本版エグゼンプション)の導入には、絶対に反対です!
貴職に以下のことを要請いたします。
1.労働時間規制の新たな適用除外制度(日本版エグゼンプション)の導入をしないこと。
2.労働時間法制の見直しにあたっては、私たちをはじめ過重労働により健康や命を脅かされ
る実体験をした労働者とその家族の意見を反映させること。
3.過労死やストレスに脅えることなく健康に生活し、安心して、希望を持って働けるルール
をつくりあげていく立場から関連する諸法制等の見直しを行うこと。


要請者一覧 (敬称略)
秋山光夫(千葉県在住)
        大手建設会社勤務中に急性動脈瘤乖離で倒れ、奇跡的に一命をとりとめるも、障害
が残る。千葉労働基準監督署で労災認定、現在も療養中。
石井淳子(北海道在住)[当日は参加できず]
        リクルートで週刊B-ing、デジタルB-ingを担当していた長男が1996年に29歳でくも
膜下出血により死亡。会社を相手取った損害賠償裁判は2004年に東京地裁で和解成立。中央
労働基準監督署、審査官、審査会は労災と認めず、2006年9月19日に行政訴訟を提起。
大瀧友二(神奈川県在住)
        JRや京浜急行等の鉄道信号ケーブルの敷設工事等の作業主任として日勤(7:30〜18
:00)と夜勤(23:30〜4:30)の通し勤務を連日続けていたさなか、2003年7月30日、JR熱海駅
構内で作業中に脳梗塞で倒れた。横浜北労基署で労災認定、本年8月末で症状固定となり障害
補償給付請求を準備中。
小笠原徹(神奈川県在住)[当日は参加できず]
        神奈川県厚木市の小さなプラスティック成型工場の工場長(名ばかり)として働き、
1998年にクモ膜下出血発症、現在も療養中。労働基準監督署は不支給決定したが、再審査請
求中に認定基準が改正され業務上決定。残業代のつかない工場長だったが、タイムカードで
時間外労働が明らかになっていたことが決定の決め手となった。
鍵山敏秀(静岡県在住)
        都内のホテルの現場で改修工事における空調工事の施工管理の業務に従事。月の残
業時間が150時間にものぼる過重労働がつづくなか、2004年11月30日、現場で脳出血を発症。
会社は労災申請に非協力的で、血圧が高かった定期健康診断の結果を本人に通知せず、にせ
の勤務表を作っていた。品川労働基準監督署で労災認定、療養中。
匿名(東京都在住)
        証券会社勤務。以前勤務していた都市銀行で、年少の女性行員が過重労働が原因で
過労死した。仲間と語らって、タイムレコーダーを正確に打刻―それまでは、定時に打刻し
ていた―する「運動」を実践、銀行の長時間労働について、一定の歯止めをかけた経験をも
つ。
匿名(東京都在住)
        東京海上の情報処理を担当していた長男が26歳の若さで致死性不整脈により死亡。
東京地裁で労災認定が確定。
木村啓子(神奈川県在住)
銀行の国際金融法人部次長であった夫が長時間・過密労働により疲労を蓄積させていたとこ
ろ、東南アジアとヨーロッパにまたがる海外出張から帰国した直後に心筋梗塞で死亡。労災
認定、損害賠償裁判和解成立。
黒田誠(神奈川県在住)[当日は参加できず]
生命保険会社で営業を担当していた長男が1998年、総労働7,000時間、うち残業4800時間を超
える長時間労働に従事した結果、慢性骨髄性白血病を発症し、2000年に死亡。労働基準監督
署は長時間労働は認めつつも、疾病との因果関係を否定し、現在審査請求中。損害賠償裁判
和解成立。
小出典子・高見一七子(愛知県在住)
ジェイフォン(後にボーダフォン、現ソフトバンクモバイル)に勤務していた夫であり父の、
小出堯(当時56歳)が、2002年12月7日、配転後に自殺。1994年にケンウッドから東海デジタ
ルホン(ジェイフォンの前身)に出向した後、開局前後の長時間労働でうつ病に発症。その
後通院しながら通勤していたが、2002年12月物流部門への配置転換を強行され、1週間で自
殺した。現在、会社に対し損害賠償請求訴訟中。9月15日に結審し2007年1月24日判決予定。
河野さえ子(神奈川県在住)
        夫の龍平さんは三洋電機産機(当時)の「個人請負業者」(サブコン)として、コ
ンビニなどの電機製品の修理業務に従事。労働時間・健康管理なしに朝から深夜まで就労を
余儀なくされ、2001年10月に自宅で脳出血を発症、現在も療養中。労災申請では、労働者性
は認められたものの、労働時間が不詳等の理由で不支給決定を受け、現在再審査請求中。行
政訴訟も準備中。
高野廣志(群馬県在住)
        日本マクドナルド勤務。埼玉県内の直営店店長。年間1,200時間を越える残業を余
儀なくされ、残業代不払いだけでなく、健康を害しても病院に満足に通えない勤務実態に
憤り、労働組合に加入。現在、会社を相手取って、残業代の精算等主張して公判中。
中島晴香(神奈川県在住)
        すかいらーくの店長だった夫の富雄さん(当時48歳)は昼夜を問わず働いたすえ、
2004年8月脳梗塞により死亡。月の残業時間は約130時間を超えており、三鷹労働基準監督署
で労災認定。直接交渉によって会社に謝罪と賠償金の支払い、過労死再発防止の取り組みを
認めさせた。会社からの賠償金をもとに過労障害の被災者を支援する基金を立ち上げる準備
中。
中野淑子(神奈川県在住)[当日は参加できず]
        中学校教諭であった夫が深夜に及ぶ持ち帰り残業をしたことにより、くも膜下出血
を発症して死亡。地方公務員災害補償基金千葉県支部審査会で公務災害認定。
二宮宏光(神奈川県在住)[当日は参加できず]
        書店のチェーン展開をする文教堂に勤務。店長時代、年間残業1,000時間を越える
も、残業代は支払われず、過労のため帰宅時に自動車にはねられ、生死の淵を彷徨う。現在
会社を相手取って、残業代等請求訴訟をおこし、公判中。
橋本孝治(神奈川県在住)[当日は奥様と一緒に参加]
        金港交通のタクシー運転手として、朝から翌日朝までの交代制勤務に従事。賃金は
違法な完全歩合制で、生活のために長時間労働を余儀なくされた。1998年に脳梗塞になり、
現在も療養中。労働基準監督署は不支給決定。再審査請求中に労災認定基準が改正され、業
務上決定。会社相手に民事損害賠償裁判も提訴し、一審で会社の責任が認められ、確定。
匿名(東京都在住)
        夫がくも膜下出血で倒れる。労災認定。
渡邉しのぶ(千葉県在住)
大手電機メーカーに勤務していた夫(当時40歳)は、アメリカで開発された燃料電池を日本
市場向けに改良し、販売するためのエンジニアだった。毎日終電まで残業し帰宅時間は深夜
1時、休日も頻繁に出社していた。連日の過重業務の中でアメリカ東海岸の出荷元への出張
を繰り返していた。2000年の最後の出張は日曜の夜帰国し月曜から平常どおり勤務、帰国3
日後に脳内出血で倒れ死亡。三田労働基準監督署で労災認定。




2006年10月24日
過労死をなくすために、「ホワイトカラーイグゼンプション」の
法制化に強く反対いたします

私ども、全国過労死を考える家族の会(以下、家族の会)は、過重労働が原因で、夫・妻・
娘・兄弟・姉妹等を亡くした遺家族の団体です。被災者の誰もが人一倍真面目に働いて来ま
した。
家族の会の結成以来20年近く、毎年毎年「過労死」を無くすために、私どもは社会に対し警
鐘を鳴らし続けてきました。しかし、「過労死・過労自殺」は、減るどころか増加の一途を
たどっています。
結成当時は40〜50代の働き盛りの脳・心臓疾患による死亡が多くを占めていましたが、最近
では20〜30代の「心の病」から来る自殺も、どんどん増えつつあります。
息子や娘が犠牲となり、年老いた父や母が、中には一家全員で私どもの「家族の会」に入会
してきます。
こういった現状を無視して、厚生労働省は緩みに緩んだ労働基準法の労働時間規制をさらに
緩めようとしていることに、私どもは非常に危惧しております。

昔から労働賃金に表れないサービス残業が、わが国では横行してきました。
それに加えて「裁量労働・成果主義」が導入されたため、無制限に働かされた結果過労死・
過労自殺がますます増加してきております。
「日本版ホワイトカラーイグゼンプション」は、現在のサービス残業をさらに合法化して、
際限なく長時間労働をさせても人件費やコストは増えないという、企業にとってはまことに
都合のよいシステムです。
これは、真面目に働く人たちの過労死・過労自殺等の増加に一層拍車をかけるものと考えら
れる、非常に危険な法律です。
私どもはけっしてこれを容認することはできません。
家族の会は、労働基準法が定めている、「一日8時間労働・週40時間制」をきちんと企業に
守らせて欲しいのです。私ども、家族の会は以下のことを要請いたします。
@       労働基準法、労働安全衛生法を企業に厳格に守らせて下さい。
A       労働基準法の「改正」をはじめ、8時間労働制度をなし崩しにする「ホワイトカラ
ーイグゼンプション」の導入に反対します。
B       過労死・過労自殺を出した企業に対しては、社名を公表するとともに厳罰を科し
てください。
C       労働災害の被災者が泣き寝入りすることがないよう、過労死の認定基準をきちん
と見直すことを要求します。
全国過労死を考える家族の会

要 請 文
過労死をなくすために、「ホワイトカラーイグゼンプション」の法制化に強く反対いたし
ます。

全国過労死を考える家族の会
東京都千代田区神田須田町1丁目7番   会長  鈴木美穂
東京過労死を考える家族の会/大阪過労死を考える家族の会/名古屋過労死を考える家族
の会/長野過労死を考える家族の会/京都職対連労災被災者家族の会/岡山過労死を考える
家族の会/兵庫労災を考える家族の会/山梨過労死と労災問題を考える会