★審議会レポート★
ここでは、日本版エグゼンプションと労働契約法制についての話し合いが行われている「労働政策審議会労働条件分科会」での議論の内容、共同アピール運動での活動の様子などについてレポートします。
■10月24日 第64回労働政策審議会労働条件分科会 傍聴報告
■11月10日 第65回 〃
■11月21日 第66回 〃
■11月28日 第67回 〃
■12月 8日 第68回 〃
■12月21日 第69回 〃
■12月27日 第70回 〃
■1月25日 第71回 〃
■2月 2日 第72回 〃
●11月10日に提出された素案
●11月21日に提出された素案
●11月28日に提出された素案
●12月08日に提出された素案
●12月21日に提出された素案
●12月27日に提出された素案
● 2月 2日に提出された素案
以下色分け 労=労働者委員、使=使用者委員、公=公益委員、事=事務局(厚生労働省)
●2007年2月2日 労働政策審議会労働条件分科会
この日は、前回示された法案要綱(内容は前回と同じ)について答申が出されました。通常、答申が出されるときは「おおむね妥当と認める」のみとされるのですが、今回の答申に当たっては、以下のような文章が付記されました。
1 要綱については、以下の意見のあった事項を除き、おおむね妥当と考える。
2 労働者代表員から、要綱第三の自己管理型労働制について、すでに柔軟な働き方を可能とする他の制度が存在すること、長時間労働となるおそれがあること等から、新たな制度の導入は認められない、要綱第四の企画業務型裁量労働制について、二重の基準を設定することは問題であり、また、対象者の範囲を拡大することとなるので、見直しを行うことは認められないとの意見があり、使用者代表委員から、要綱第一の時間外労働について、割増賃金の引き上げは長時間労働を抑制する効果が期待できないばかりか、企業規模や業種によっては企業経営に甚大な影響を及ぼすので引上げは認められないとの意見があった
要するに、2で書いたもの以外は「おおむね妥当と考える」というものです。
このような取扱いは異例。今後、どのような法案が作成されるか・されないのか、作成された後、どのような取扱いがなされるのかは、政治が判断することになります。
以下では、この日の日本版エグゼンプションに関する議論の要旨を紹介します。
根本(代理)委員 前回も申し上げたが、東京商工会議所としては答申には反対だ。自己管理型労働制には賛成だが、年収要件は不要だ。
小山委員 報告書では「自由度の高い働き方にふさわしい制度」とされていたが、法案要綱では「自己管理型労働制」と名称を変更したのはなぜか?
事務局 自身での労働時間の自由度が高いと考えたが、労働時間を自己管理するという観点から名称を変更した。
小山委員 今の説明は、これまでの議論を踏まえていない。使用者の安全配慮義務よりも自己責任が強調されるのではないか。
事務局 この制度でも使用者には労働時間の把握が必要になるので、必ずしもそういうことにはならない。
小山委員 自己管理型労働制で「対象労働者の適正な労働条件の確保を図るため、厚生労働大臣が指針を定める」としているが、指針に違反した場合はどうなるのか。
事務局 法解釈に基づく指針であれば法律違反を形成する。指針の解釈が分かれることがないよう、議論をして指針を作成してきたい。
奥谷委員 自己管理型労働制の対象者の要件のうち「業務上の重要な権限及び責任を相当程度伴う地位にある者」と「年収が相当程度高い者」は、かなりの年配者になると思う。若い人に使えないのはおかしい。幅広く男女ともに使えるようにすることが大切で、役職などで限定するのはおかしい。
田島委員 今の奥谷委員と先ほどの根本(代理)委員の意見を合わせ、小さく生んで大きく育てることはわかりきっている。労働者派遣法の対象業務は、当初は13業務から始まり自由化された。この制度も同様に、いったん入れてしまえばどんどん対象者が広げられていくことになる。
奥谷委員 小山委員に伺いたい。先ほどの「使用者の安全配慮義務よりも…」などの意見は、強制労働を前提にして聴いているのか。
小山委員 長時間労働が強制されているとは思っていない。多くの労働者が、仕事に対する責任感からある意味で自主的に長時間働いている。そうならないように、使用者がチェックすることが必要だ。また、チェックする仕組みがないと働きすぎる。自由だ、自己管理だ、などの美辞麗句を並べても現実にはそうならない。
紀陸委員 自己管理型労働制の基本は労使委員会だ。この制度は新しい働き方に対する挑戦だと考えている。個別の労働者にダメージがないようにすることが必要だ。今回の分科会で、我々の手を放れ政治に移るが、一部で報道されているような片方だけ(割増率の引き上げだけ)で法案を作成するのはフェアではない。
小山委員 企画業務型裁量労働制の中小企業特例は、ダブルスタンダードだ。中小企業の定義によるが、数が多い中小企業に対する特例は認めるべきではない。「主として従事する」という表現も曖昧だ。拡大し、裁量労働制の基本的な変質になりかねず反対だ。
長谷川委員 自己管理型労働制はおかしいと思っている。名称は変わっても内容は変わっていない。使用者委員はバラ色のようなことをいっているが、8割以上の労働者が反対しているという調査結果もある。本来、過労死、過労自殺、長時間労働をどうするか、どうすれば健康に働き続け、家庭、地域で活動し、生きていくことができるか、という議論だったはずだ。自己管理型労働制と企画業務型裁量労働制の中小企業特例は、大きな問題があり、認めることはできない。
原川委員 企画業務型裁量労働制の中小企業特例は、中小企業だからいい加減にしてもいいとは考えていない。実態に応じ、中小企業でも有効に活用できるようにしてほしいということだ。一部、報道にあるように割増賃金率の引き上げのみが先行して行われることのないようにしてほしい。
根本(代理)委員 繰り返すが、答申には反対だ。労使から反対意見があったにもかかわらず、答申を行うことは理解できない。自己管理型労働制も「残業代ゼロ法案」などといわれており、公正な議論が期待できない。
廣見委員 労使で一致したところ、しなかったところがあるが、議論のまとめとしてはこれでいいのではないか。
平川委員 ずいぶん時間をかけて議論をしてきた。意見のあるところは、あるところとして、これでよいと思う。変な誤解を与えている。机を挟んでたたき合いをしているわけではない。まじめに議論をしてきたまとめとして、これでよいと思う。
日本版エグゼンプションは、新聞報道などでは「見送りへ」などとされていたほか、一部の報道ではこの日の議論でも出てきたように時間外の割増率の引き上げを先行して行うなどが報じられています。しかし、これらはすべて公式な見解としてだされたものではなく、法案が作成されない、あるいは提出されないという保障はどこにもありません。
日本版エグゼンプションは、財界が強行に推し進めようとしている「労働ビッグバン」の流れを汲むものです。そう簡単にあきらめるはずはありません。
今後も日本版エグセンプションを始めとした「労働ビッグバン」に対する徹底した反対運動を展開していきます。
●2007年1月25日 労働政策審議会労働条件分科会
この日は、年末に出された報告書をもとに法案のベースとなる「法案要綱」が示されました。法案要綱が分科会で「諮問」されると法案になり、閣議決定を経て国会に提出されることになります。 年末年始にかけて、与党内からも慎重論が相次ぎ、安倍総理大臣も「現段階で国民の理解が得られているとは思えない」(朝日新聞)などと発言していたことから、「日本版エグゼンプション国会提出見送りへ!」などと報道されていましたが、結局、しっかりと日本版エグゼンプションが盛り込まれた法案要綱が提出されました。しかも「自己管理型労働制」と、またもや名称を変えて登場しています(「労働基準法の一部を改正する法律案要綱」の第三)。
以下、法案要綱全文を掲載します。
労働契約法案要綱
第一 目的
この法律は、労働契約の成立及び変更等に関する基本的な事項を定めることにより、労働者及び使用者が円滑に労働契約の内容を自主的に決定することができるようにするとともに、労働者の保護を図り、もって個別の労働関係の安定に資することを目的とすること。
第二 労働者及び使用者の定義
一 この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいうものとすること。
二 この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいうものとすること。
第三 労働契約に関する原則等
一 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものであるものとすること。
二 使用者は、労働者に提示する労働条件及び締結された労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとすること。 三 労働者及び使用者は、締結された労働契約の内容について、できる限り書面により確認するようにするものとするものとすること。
四 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならないものとし、その権利の行使に当たっては、それを濫用するようなことがあってはならないものとすること。
五 使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、労働契約に伴い必要な配慮をするものとするものとすること。
第四 労働契約の成立及び変更
一 労働契約の成立
(1)労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立するものとすること。
(2)使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則の労働条件によるものとするものとすること。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意した部分については、三(1)に該当する場合を除き、この限りでないものとすること 二 労働契約の内容の変更
(1)労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができるものとすること。
(2)使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできないものとすること。ただし、(3)による場合は、この限りではないものとすること。 (3)使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとするものとすること。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、三(1)に該当する場合を除き、この限りでないものとすること。 (4)就業規則の変更の手続に関しては、労働基準法第89条及び第90条の定めるところによるものとすること。
三 その他の労働契約及び就業規則に関する事項等
(1)就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とするものとすること。この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準によるものとすること。 (2)就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、一(2)、二(2)及び三(1)は適用しないものとすること。
(3)使用者が労働基準法第15条第1項の規定により明示した賃金、労働時間その他の労働条件が事実と相違する場合には、労働者は即時に労働契約を解除することができるものとすること。
第五 労働契約の継続及び終了
一 労働契約の継続
(1)使用者が労働者に出向(在籍型出向)を命じることができる場合において、その出向が、その必要性、対象労働者の選定状況その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、出向の命令は無効とするものとすること。
(2)使用者は、労働者と合意した場合に、転籍(移籍型出向)をさせることができるものとすること。 (3)使用者が労働者を懲戒することができる場合において、懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、当該懲戒が、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とするものとすること。
二 労働契約の終了
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とするものとすること。
第六 期間の定めのある労働契約
一 使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がないときは、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができないものとすること。
二 使用者は、期間の定めのある労働契約について、その締結の目的に照らして、必要以上に細分化された契約期間で反復して更新することのないよう配慮しなければならないものとすること。
第七 その他
― 船員に関する特例並びに国家公務員及び地方公務員等の適用除外について所要の規定を設けるものとすること。
二 施行期日
この法律は、公布の日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。ただし、三のうち労働基準法第89条に定める就業規則の記載事項に出向に関する事項を追加することについては、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとすること。
三 関係法律等の一部改正
労働基準法第89条に定める就業規則の記載事項に出向に関する事項を追加すること等の労働基準法の関係規定についての改正を行うほか、関係法律の規定について所要の整備を行うものとすること。
労働基準法の一部を改正する法律案要綱
第一 時間外労働
一 時間外労働の限度基準で定める事項に、割増賃金に関する事項を追加するものとすること。
注 限度基準において、特別条項付き協定を締結する場合には延長時間をできる限り短くするように努めること、特別条項付き協定では割増賃金率も定めなければならないこと及び当該割増賃金率は法定を超える率とするように努めることを定めることとする。
二 使用者は、政令で定める時間を超えて時間外労働をさせたときは、その超えた時間について、政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないものとすること。
注 政令で定める時間及び率については、労働者の健康確保の観点、中小企業等の企業の経営環境の実態、割増賃金率の現状、長時間の時間外労働に対する抑制効果等を踏まえて定めることとする。
三 使用者は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定(以下「労使協定」という。)により、二の割増賃金の支払に代えて、有給の休日を与えることができるものとすること。
第二 年次有給休暇
使用者は、年次有給休暇の日数のうち5日を超えない部分については、労使協定により当該事業場における上限日数や対象労働者の範囲を定めた場合には、1時間を単位として年次有給休暇を与えることができるものとすること。
第三 自己管理型労働制
一 労使委員会が設置された事業場において、労使委員会が委員の5分の4以上の多数により四に掲げる事項について決議をし、かつ、使用者が当該決議を行政官庁に届け出た場合において、三のいずれにも該当する労働者を労働させたときは、当該労働者については、休日に関する規定は二のとおり適用し、労働時間、休憩、時間外及び休日の労働並びに時間外、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は適用しないものとすること。
二 使用者は、一により労働する労働者(以下「対象労働者」という。)に対して、4週間を通じて4日以上かつ1年間を通じて週休2日分の日数(104日)以上の休日を確実に確保しなければならないものとし、確保しなかった場合には罰則を付すものとすること。
三 対象労働者は、次のいずれにも該当する労働者とするものとすること。
(1)労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事する者
(2)業務上の重要な権限及び責任を相当程度伴う地位にある者
(3)業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする者 (4)年収が相当程度高い者
注 対象労働者としては管理監督者の一歩手前に位置する者が想定されることから、年収要件もそれにふさわしいものとすることとし、管理監督者一般の平均的な年収水準を勘案しつつ、かつ、社会的に見て当該労働者の保護に欠けるものとならないよう、適切な水準を検討した上で厚生労働省令で定めることとする。
四 労使委員会は、次に掲げる事項について決議しなければならないものとすること。
(1)対象労働者の範囲
(2)賃金の決定、計算及び支払方法
(3)週休2日相当以上の休日の確保及びあらかじめ休日を特定すること
(4)労働時間の状況の把握及びそれに応じた健康・福祉確保措置の実施
注 「週当たり40時間を超える在社時間等がおおむね月80時間程度を超えた対象労働者から申出があった場合には、医師による面接指導を行うこと」を必ず決議し、実施することを指針において定めることとする。
(1)苦情処理措置の実施
(2)対象労働者の同意を得ること及び不同意に対する不利益取扱いをしないこと
(3)(1)から(6)までに掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
五 対象労働者の適正な労働条件の確保を図るため、厚生労働大臣が指針を定めるものとすること。 注 指針においては、使用者は対象労働者と業務内容や業務の進め方等について話し合うことを示すこととする。
六 行政官庁は、制度の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、使用者に対して改善命令を出すことができることとし、改善命令に従わなかった場合には罰則を付すものとすること。
第四 企画業務型裁量労働制
一 中小企業については、労使委員会が決議した場合には、現行において制度の対象業務とされている「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」に主として従事する労働者について、当該業務以外も含めた全体についてみなし時間を定めることにより、企画業務型裁量労働制を適用することができるものとすること。
注 中小企業については、厚生労働省令で定めることとする。
二 企画業務型裁量労働制の対象労働者の労働時間の状況及び健康・福祉確保措置の実施状況に係る定期報告を廃止するものとすること。
注 企画業務型裁量労働制の苦情処理措置について、健康確保や業務量等についての苦情があった場合には、労使委員会で制度全体の必要な見直しを検討することとするよう指針を見直すこととする。
第五 その他
その他所要の整備を行うものとすること。
第六 附則
一 施行期日
第二については平成20年1月1日から施行するものとし、第一及び第三から第五までについては公布の日から起算して1年を越えない範囲内において制令で定める日から施行するものとすること。
二 経過措置及び関係法令の整備
この法律の施行に関し必要な経過措置を定めるとともに、関係法律について所要の整備を行うものとすること。
上記の法案要綱を事務局(厚生労働省)が読み上げて説明した後、労働側の田島委員から「認められないとした意見が反映されていない」という発言から始まりました。使用者側の渡邊委員からも「労使での議論が尽くされていない。手続きばかりが求められる内容で、規制緩和に逆行するものだ。答申はすべきでない」などの意見が出されました。
以下では、日本版エグゼンプションに関する議論の要旨をご紹介します(今回から発言者の名前を掲載します。発言が公・労・使・事務局のいずれによるかは色で判断してください)。
小山委員 12月27日以降、日本版エグゼンプションは国民の理解を得られていないので国会提出は見送りとの報道がなされていた。削除されると信じていたが、報告書の内容がそのまま出されている。今日(1月25日)の日経新聞の朝刊に「日本版エグゼンプションを切り離し、残業代の割増率引き上げだけを先行して労働基準法改正安に盛る検討に入った」との報道もあった。なぜ、法案要綱が諮問されているのか? おかしいと思う。厚生労働省としての考えを、青木局長に直接伺いたい。
青木局長 新聞報道は見ていないのでコメントは控えたい。総理は「提出すべきでない」と発言したとは理解していない。「やらない」などの判断は政府としてはしていない。長時間労働が高止まりしており、厚生労働省として少子化にも取り組んでいる。「労働」の在り方の見直しは「待ったなし」だと考えている。働くときは働き、休むときは休むことが産業を支えていく力になる。理解が十分でないと思う。引き続き、きちんと説明をして理解を得られるよう努力していきたい。
小山委員 私たちは日本の労働者を代表して、ここにいると考えている。多くの労働者がこの制度に反対している。内容に問題があるから反対しているのであって、説明が不足していて理解が足りないからではない。長時間労働を助長するものは、削除するとの決断が必要なのではないか。
紀陸委員 労働組合の方々は誤解をしている。働き方は大きく変わっている。これまでの考え方のままで反対していていいのか。働き方の選択肢を増やすことが目的なのであって、残業代をなくすことが目的ではない。説明不足なのではなく、誤解されている。年収の要件などは労使自治で各企業で話し合って決めていくべきだ。年収要件を設けるのであれば高くすべきでない。
長谷川委員 連合に激励が多数寄せられている。日本経団連は年収要件を400万円とする提言をまとめている。厚生労働省が毎年実施している賃金構造基本統計調査をもとに、年収要件は900万円とする説が実しやかに流れている。今回示された法案要綱での日本版エグゼンプションの対象労働者の要件に「主として」の一文を入れ、「対象労働者は、主として次のいずれにも該当する労働者と…」とすれば、年収要件を400万円まで下げることができるのは明らかだ。みんながイヤだといっている。労働側委員も全員反対している。なのになぜ入れて法案要綱を作成しようとするのか。削除すべきだ。
紀陸委員 私たち(日本経団連)が提言した数字にこだわりはない。イメージとして出したもので、そんな趣旨ではない。誤解の上で批判されている。ホワイトカラー労働者は、成果と賃金と労働時間がリンクしていないケースが多い。そこをどう考えるかの議論がないといけない。
八野委員 使用者側委員は現場を誤解している。経済、経営の理念が間違っている。対象者や要件は小さく生んで大きく育てることは目に見えている。
田島委員 冒頭に使用者側の渡邊委員からも「労使での議論が尽くされていない」「答申はすべきでない」との意見が出された。この点では、労使で意見が一致しているのだから、答申すべきではない。
原川委員 柔軟な働き方は必要だ。中小企業もワークライフバランスの実現に努力している。年収要件は中小企業でも広く活用できる制度とすべきだと考えている。
山下委員 旧来型の労働時間規制では対応しきれない現実がある。「残業代ゼロ」という間違った見方が先行してしまい残念だ。残業代が支払われないようになれば、集中力が高まって生産性が向上するということもあるのではないか。選択肢を増やすことが趣旨なのであって、実態に合わないと判断した企業は使わなければいい。
新聞報道などから、政府・与党内で選挙を懸念した「揺らぎ」があることは間違いないと思われますが、日本版エグゼンプションを導入するという基本姿勢には何ら変わりはということを傍聴していて実感しました。
どうやら国民が反対しているのは「制度に問題がある」からではなく、「理解が不十分なため」と思われている、あるいはそう思わせようとしているということで間違いないようです。
しかし、いったん気を許して立法化されてしまえば、数年後の見直しの都度、権利を奪い続け、当初の立法の趣旨さえも無視しされてしまうことは、労働者派遣法の変遷を見れば明らかです。さらなる運動の強化が必要です。
なお、次は2月2日を予定しています。
●2006年12月27日 労働政策審議会労働条件分科会
12月27日、今年最後となる労働政策審議会労働条件分科会が行われました。
この日は、先日、出された報告(案)を、報告としてまとめるための話し合いです。しかし、これまでもお伝えしてきたように、労働契約法制、労働時間法制のいずれについても労使の意見の隔たりは大きく、報告の取りまとめを断念するのが通常のパターンです。しかし、厚生労働省は、報告の中に、労使の意見を併記する形で日本版エグゼンプションを盛り込んだ報告のとりまとめを強行してきました。
取りまとめにあたって、報告では日本版エグゼンプションについて「なお、自由度の高い働き方に相応しい制度については、労働者代表委員から、既に柔軟な働き方を可能とするほかの制度が存在すること、長時間労働となるおそれがあること等から、新たな制度の導入は認められないとの意見があった」との一文が加わりました。
この日の審議では使用者委員では、中小企業の代表から「労働契約法は、使用者にばかり手続きが求められる。増加している個別労働紛争の未然防止が目的だったはずだが、この内容ではかえって紛争を助長することになりかねない。労働時間法制については、割増賃金のアップが我々の意見が反映されずに残っていることは遺憾だ。日本版エグゼンプションについても、働き方に関係のない年収要件が残されており削除すべき。中小企業にとって影響が大きく、もっと議論が必要だ。本日の報告の取りまとめは時期尚早だ」との意見が出されるに止まりました。
これに対し労働側委員からは、以下のような意見が出されました。
「報告では『労働契約は、労働者及び使用者の対等の立場における合意に基づいて締結される』としているが、今回の報告が合意に基づいているかははなはだ疑問だ。有期契約に関する記述もこれでは問題の解決にならない。また個人事業主の扱いにされ、不当に劣悪な労働条件で働かされている労働者を労働契約法の対象から外すべきではない」
「これまで何度も述べてきたが、就業規則の変更による労働条件の変更は原則として認められないことを明記すべきで、記述するのであれば判例から逸脱することなく判例を足し引きなしで記述すべきだ」
「企画業務型裁量労働制の中小企業の特例が残されたことに怒りを感じる。中小企業が『使いにくい』といえば緩和されるといういこと自体がおかしい」
「これまで何度も日本版エグゼンプションについては削除すべきと申し上げてきた。自由度の高い働き方として、現在でもでも裁量労働制やフレックスタイム制がある。本当に必要なのか、こんな働き方はあり得ない、と繰り返し述べてきたが使用者委員からも厚生労働省からも公益委員から説得力のある意見をいただけなかった。到底認められるものではない」
「議論の入り口は、長時間労働の抑制、増加する個別労働紛争への対応であったはずだが、まったく違うものになった。使用者委員からこれまで「使い勝手のいい」という言葉が再三使われたのが、ひっかかっている」
「日本版エグゼンプションは本当に必要なのか。どの企業も仕事に対する付加が高まり、みんな必死に働いている。問題は現行の制度の中でどのようにするかであって、日本版エグゼンプションを導入することではないはずだ。使用者委員は再三、労使自治、労使対等という言葉を使われたが、一方的に都合よく使われたように感じる」
「今後の法案の作成に当たっては、これまでの議論を斟酌してまとめてほしい」
労働側の最後の意見について、公益委員は「これまでの審議の過程で出された意見を踏まえて審議会の答申をさせていただきます」と述べ、この日の審議は1時間足らずで終了。今後は、今回の報告をもとに、「法案要綱」を作成し、それをもとに「法案」を作成。閣議決定を経て、国会に提出される予定です。
もちろん、法案要綱、法案の作成に当たって、さらに議論が必要になります。
このため今回の報告の取りまとめは、第1ステージが終了したに過ぎません。
見込みではありますが、法案要綱と法案の作成は1月下旬、国会での審議は3月下旬以降、場合によってはゴールデンウィーク明けになると予想されます。
まだまだ、あきらめるわけにはいきません。
今後も徹底した反対運動を展開していきます。
●2006年12月21日 労働政策審議会労働条件分科会
今年も残すところ10日余となった12月21日に開催された労働条件分科会。この日は、12月8日に提出された「報告案」を若干変更したものが提出されました。
日本版エグゼンプションに関する項目については、年収要件の後に「なお、対象労働者としては管理監督者の一歩手前に位置するものが想定されることから、年収要件もそれにふさわしいものとすることとし、管理職者一般の平均的な年収水準を勘案しつつ、かつ、社会的に見て当該労働者の保護に欠けるものとならないよう、適切な水準を当分科会で審議した上で命令で定めることとすること」との一文が新たに加わりました。
今回もちょっと長くなりますが、この日提出された報告案の全文をご紹介します。
下線をした部分は、今回新たに加わった部分です。
今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)
(案)
T 労働契約法制
労働契約の内容が労使の合意に基づいて自主的に決定され、労働契約が円滑に継続するための基本的な考え方として、次のとおりルールを明確化することが必要である。
1 労働契約の原則
@労働契約は、労働者及び使用者の対等の立場における合意に基づいて締結され、又は変更されるべきものであるものとすること。
A使用者は、契約内容について、労働者の理解を深めるようにするものとすること。
B労働者及び使用者は、締結された労働契約の内容についてできる限り書面により確認するようにするものとすること。
C労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に権利を行使し、義務を履行しなければならず、その権利の行使に当たっては、それを濫用するようなことがあってはならないこととすること。
D使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができる職場となるよう、労働契約に伴い必要な配慮をするものとすること。
E使用者は、労働契約において雇用の実態に応じ、その労働条件について均衡を考慮したものとなるようにするものとすることとしてはどうか。
2 労働契約の成立及び変更について
(1)合意原則
労働契約は、労働者及び使用者の合意によって成立し、又は変更されることを明らかにすること。
(2)労働契約と就業規則との関係等
@就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とし、無効となった部分は、就業規則で定める基準によることを、労働契約法において規定すること。
A就業規則が法令又は労働協約に反してはならないものであり、反する場合の効力について、労働契約法において規定すること。
B合理的な労働条件を定めて労働者に周知させていた就業規則がある場合には、その就業規則に定める労働条件が、労働契約の内容となるものとすること。
ただし、@の場合を除き、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働契約の内容を合意した部分(特約)については、その合意によることとすること。
(3)就業規則の変更による労働条件の変更
@イ 使用者が就業規則を変更し、その就業規則を労働者に周知させていた場合において、就業規則の変更が合理的なものであるときは、労働契約の内容は、変更後の就業規則に定めるところによるものとすること。
ロ 上記イの「合理的なもの」であるかどうかの判断要素は、次に掲げる事項その他の就業規則の変更に係る事情とすること。
@ 労働組合との合意その他の労働者との調整の状況(労使の協議の状況)
A 労働条件の変更の必要性
B 就業規則の変更の内容
ハ 労働基準法第9章に定める就業規則に関する手続が上記イロの変更ルールとの関係で重要であることを明らかにすること。
ニ 就業規則の変更によっては変更されない労働条件を合意していた部分(特約)については、イによるのではなく、その合意によることとすること。
A就業規則を作成していない事業場において、使用者が新たに就業規則を作成し、従前の労働条件に関する基準を変更する場合についても、@と同様とすること。
3 主な労働条件に関するルール
(1)出向(在籍型出向)
使用者が労働者に在籍型出向を命じることができる場合において、出向の必要性、対象労働者の選定その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、出向命令律無効とすること。
(2)転籍(移籍型出向)
使用者は、労働者と合意した場合に、転籍をさせることができることとすること。
(3)懲戒
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、その懲戒が、労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、杜会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とすること。
4 労働契約の終了等
(1)解雇
労働基準法第18条の2(解雇権の濫用)を労働契約法に移行することとすること。
(2)整理解雇(経営上の理由による解雇)
経営上の理由による解雇が客観的に合理的な理由を欠き、杜会通念上相当であると認められない場合」に該当するか否かを判断するために考慮すべき事情については、判例の動向も踏まえつつ、引き続き検討することが適当である。
(3)解雇に関する労働関係紛争の解決方法
解雇の金銭的解決については、労働審判制度(平成18年4月施行)の調停、個別労働関係紛争制度のあっせん等の紛争解決手段の動向も踏まえつつ、引き続き検討することが適当である。
5 期間の定めのある労働契約
@使用者は、期間の定めのある労働契約の契約期間中はやむを得ない理由がない限り解約できないこととすること。
A使用者は、その労働契約の締結の目的に照らして、不必要に短期の有期労働契約を反復更新することのないよう配慮しなければならないこととすること。
B「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」第2条の雇止め予告の対象の範囲を拡大(現行の1年以上継続した場合のほか、一定回数(3回)以上更新された場合も追加)することとすること。
また、有期契約労働者については、今回講ずることとなる上記@からBまでの施策以外の事項については、有期労働契約が良好な雇用形態として活用されるようにするという観点も踏まえつつ、引き続き検討することが適当である。
6 労働基準法関係
@労働契約の即時解除に関する規定を労働契約法に移行することとすること。
A就業規則の相対的必要記載事項(当該事業場において制度がある場合には明記することが求められる事項)として、出向を追加することとすること。
また、労働基準法第36条等の「過半数代表者」の選出要件について明確にすることとし、その民主的な手続について引き続さ検討することが適当である。
7 国の役割
@労働契約法に関する国の役割は、同法の解釈を明らかにしつつ周知を行うこととし、同法について労働基準監督官による監督指導を行うものではないこと。
A個別労働関係紛争解決制度を活用して紛争の未然防止及び早期解決を図ることとすること。
U 労働時間法制
仕事と生活のバランスを実玩するための「働き方の見直し」の観点から、長時間労働を抑制しながら働き方の多様化に対応するため、労働時間制度について次のとおり整備を行うことが必要である。
1 時間外労働削減のための法制度の整備
(1)時間外労働の限度基準
@限度基準において、労使自治により、特別条項付き協定を締結する場合には延長時間をできる限り短くするように努めることや、特別条項付き協定では割増賃金率も定めなければならないこと及び当該割増賃金率は法定を超える率とするように努めることとすること。
A法において、限度基準で定める事項に、割増賃金に関する事項を追加することとすること。
(2)長時間労働者に対する割増賃金率の引上げ
@使用者は、労働者の健康を確保する観点から、一定時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、現行より高い一定率による割増賃金を支払うこととすることによって、長時間の時間外労働の抑制を図ることとすること。なお、「一定時間」及び「定率」については、労働者の健康確保の観点、企業の経営環境の実態、割増賃金率の現状、長時間の時間外労働に対する抑制効果などを踏まえて引き続き検討することとし、当分科会で審議した上で命令で定めることとすること。
A割増率の引上げ分については、労使協定により、金銭の支払いに代えて、有給の休日を付与することができることとすること。
2 長時間労働削減のための支援策の充実
長時間労働を削減するため、時間外労働の削減に取り組む中小企業等に対する支援策を講ずることとすること。
3 特に長い長時間労働削減のための助言指導等の推進
特に長い長時間労働を削減するためのキャンペーン月間の設定、上記1(1)の時間外労働の限度基準に係る特に長い時間外労働についての現行法の規定(労働基準法第36条第4項)に基づく助言指導等を総合的に推進することとすること。
4 年次有給休暇制度の見直し
法律において上限目数(5日)を設定した上で、労使協定により当該事業場における上限日数や対象労働者の範囲を定めた場合には、時間単位での年次有給休暇の取得を可能にすることとすること。
5 自由度の高い働き方にふさわしい制度の創設
一定の要件を満たすホワイトカラー労働者について、個々の働き方に応じた休日の確保及び健康・福祉確保措置の実施を確実に担保しつつ、労働時間に関する一律的な規定の適用を除外することを認めることとすること。
(1)制度の要件
@対象労働者の要件として、次のいずれにも該当する者であることとすること。
@ 労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事する者であること
A 業務上の重要な権限及び責任を相当程度伴う地位にある者であること
B 業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする者であること
C 年収が相当程度高い者であること
なお、対象労働者としては管理監督者の一歩手前に位置する者が想定されることから、年収要件もそれにふさわしいものとすることとし、管理監督者一般の平均的な年収水準を勘案しつつ、かつ、社会的に見て当該労働者の保護に欠けるものとならないよう、適切な水準を当分科会で審議した上で命令で定めることとすること。
A制度の導入に際しての要件として、労使委員会を設置し、下記(2)に掲げる事項を決議し、行政官庁に届け出ることとすること。
(2)労使委員会の決議事項
@労使委員会は、次の事項について決議しなければならないこととすること。
@ 対象労働者の範囲
A 賃金の決定、計算及び支払方法
B 週休2日相当以上の休日の確保及びあらかじめ休日を特定すること
C 労働時間の状況の把握及びそれに応じた健康・福祉確保措置の実施
D 苦情処理措置の実施
E 対象労働者の同意を得ること及び不同意に対する不利益取扱いをしないこと
F その他(決議の有効期間、記録の保存等)
A健康・福祉確保措置として、「週当たり40時間を超える在社時間等がおおむね月80時間程度を超えた対象労働者から申出があつた場合には、医師による面接指導を行うこと」を必ず決議し、実施することとすること。
(3)制度の履行確保
@対象労働者に対して、4週4日以上かつ一年間を通じて週休2日分の日数(l04日)以上の休日を確実に確保しなければならないこととし、確保しなかった場合には罰則を付すこととすること。
A対象労働者の適正な労働条件の確保を図るため、厚生労働大臣が指針を定めることとすること。
BAの指針において、使用者は対象労働者と業務内容や業務の進め方等について話し合うこととすること。
C行政官庁は、制度の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、使用者に対して改善命令を出すことができることとし、改善命令に従わなかった場合には罰則を付すこととすること。
(4)その他
対象労働者には、年次有給休暇に関する規定(労働基準法第39条)は適用することとすること。
6 企画業務型裁量労働制の見直し
@中小企業については、労使委員会が決議した場合には、現行において制度の対象業務とされている「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」に主として従事する労働者について、当該業務以外も含めた全体についてみなし時間を定めることにより、企画業務型裁量労働制を適用することができることとすること。
A事業場における記録保存により実効的な監督指導の実施が確保されていることを前提として、労働時間の状況及び健康・福祉確保措置の実施状況に係る定期報告を廃止することとすること。
B苦情処理措置について、健康確保や業務量等にっいての苦情があった場合には、労使委員会で制度全体の必要な見直しを検討することとすること。
7 管理監督者の明確化
(1)スタッフ職の範囲の明確化
管理監替者となり得るスタッフ職の範囲について、ラインの管理監督者と企業内で同格以上に位置付けられている者であって、経営上の重要事項に関する企画立案等の業務を担当するものであることという考え方により明確化することとすること。
(2)賃金台帳への明示
管理監督者である旨を賃金台帳に明示することとすること。
8 事業場外みなし制度の見直し
事業場外みなし制度について、制度の運用実態を踏まえ、必要な場合には適切な措置を講ずることとすること。
以下では、分科会での日本版エグゼンプションに関する部分を中心に、議論の要旨をご紹介します。
労 まず、この項(日本版エグゼンプションに関する部分)については削除すべきだ。これまでも議論をしてきたが、新たに適用除外を設ける必然性の説明をいただいていない。報告書の要件もホワイトカラーを広くとらえることができ、年収以外でみればみんなが当てはまる。
仕事量を自由に調整できる労働者などいない。グローバル化、24時間体制の中では、時間規制の適用除外ではなく強化が必要だ。自由なんかない! 自由にする時代ではない! 労災の認定申請の結果からも、管理職に自由度がないことは明らかだ。
休日が確保されるというが、連続して働かせることができるし、労働日に24時間働くことが可能になる。また「健康・福祉確保措置として『週当たり40時間を超える在社時間等がおおむね月80時間を超えた対象労働者から申し出があった場合には、医師による面接指導を行うこと』を必ず決議し、実施すること」とあるが、これは「申し出がなければ実施しない」ということになり、健康を確保できる内容ではない。
この制度によって、労働時間が短くなるとは思えない。バブル経済の崩壊以後、正社員から非正社員への置き換えが進み、正社員の労働時間が長時間化した。にもかかわらず、残業をやっても割増賃金を支払わず、24時間労働が可能になる制度を導入すれば、奴隷的な働かせ方になる。
「管理職の一歩手前」というが、上司と部下との間にいるそうした人たちが、「自由度が高い労働者」ということで、仕事の量を調整して早く帰ったりすることができるはずがない。
過労死、過労自殺をした労働者の遺族、長時間労働でメンタルヘルス不全に陥った労働者の声を聞いて欲しい。
この制度は、労働基準法の「管理監督者」でないにもかかわらず、実態として残業代が支払われていない違法な「管理職」の合法化、サービス残業の合法化をねらったものだ。
使 仕事が多様化し、生み出される成果も多様化している。仕事の手順などが異なってきている現状がある。こうした現状からみれば、日本エグゼンプションは意義があるのではないか。もちろん、一定の健康・福祉確保措置は必要だ。
労 上司から「働け!」といわれているから長時間労働になっているわけではない。仕事の完成に必要で、顧客の要望に応えようとして長時間労働になっている。みんな必死で働いている現実が、過労死、過労自殺になっている。こんな制度が入ったら日本はどうなるんですか! 絶対に認められない!
使 中小企業は日本版エグゼンプションに賛成だ。広く活用できるようにするため、年収要件は労使委員会で設定できるなどの余地を残して欲しい。法的に定めるのであれば、最低基準で定めるべきだ。健康・福祉確保措置は、一律ではなく業種などによって、きめ細かく定めるべきだ。
労 「自由度の高い…」などといっているが、コスト削減にしかみえない。「管理職一歩手前に位置する者が想定される」としているが、現在、これらの人たちに仕事が集中しているため、さらに長時間労働になる。
違法な偽装請負などが拡がり、経営者に対する不信が高まる中で、この制度を持ち込むことには反対せざるを得ない。
使 自由度の高い労働=長時間労働というネガティブな意見ではなくて、入れられる職場に1日8時間労働という硬直的なものではないオプションを広げたいということ。労使委員会での決議などが担保されており、歯止めになる。現実に自主性を持って、リーダーシップを発揮して働いている労働者も増えている。
労 労使対等が確保されていない中で、労使委員会は正常には機能しないので担保にはならない。
使 企画業務型の裁量労働制を中小企業にも使いやすくして欲しい。日本版エグゼンプションは、是非、導入して欲しい。労働契約法制、日本版エグゼンプション、割増賃金の3つはそれぞれ別個に議論するのではなく、一体として議論すべきだ。
労 企画業務型の裁量労働制で中小企業の特例を設けるとなれば、労働基準法上のダブルスタンダードになる。しかも、圧倒的に多数を占める中小企業に特例を設けるのは明らかにおかしい。
使 たしかにダブルスタンダードはおかしいと思う。全体の変更をすべきだ。
労 中小企業に「自由度の高い…」という労働者などいない。中小企業の特例などとんでもない。「企画業務型裁量労働制の見直し」では「…労働時間の状況及び健康・福祉確保措置の実施状況に係る定期報告を廃止することとする」としているが、なぜ廃止する意味があるのか。
先ほどからみていると使用者側の委員の意見はバラバラ。日本版エグゼンプションで労働時間の適用除外を設け、企画業務型裁量労働の枠をグズグズに広げていったら、残業代を支払われる労働者がいなくなる。
使 グローバル化などの現状にどう対処するか、次の一手を考えている。現時点だけでなく、広い視野が必要だ。柔軟に対応するためには、法律では最低限を定め、労使自治に委ねるのが望ましい。
労 労使は対等ではない。労使自治に任せているだけではダメだ。グローバル化の中の公正な取引の意味でも労働時間規制は必要だ。
この分科会は日本版エグゼンプション導入の是非を塔婆ではなく、長時間労働を是正し、健康で働きやすい職場を如何につくるかを議論すべき場であったはずです。長時間労働の原因は何なのかを突き詰め、労使で共通の認識に立った上で、お互いが歩み寄れる働き方・働かせ方とはどんなものなのか。それを進める上で、どんな法整備が必要なのか。本来であれば、そうした議論が行われなければならなかったはずです。
労働側委員の「こんな制度が入ったら日本はどうなるんですか! 絶対に認められない!」という叫びに近い意見を、公益委員、使用者側委員、そして本来、労働者の保護を最優先に考えなければならないはずの厚生労働省は、単なる「意見の違い」「立場の違い」としか受け止めていないのでしょうか?
次回、年内最後の分科会は12月27日に予定しています。
●2006年12月8日 労働政策審議会労働条件分科会
この日は「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)」(案)が示されました。これは、来年の通常国会に提出が目論まれている法案の、いわばベースになるもの。師走に入り、議論もいよいよ佳境に入ってきました。
ちょっと長くなりますが、この日、提出された報告案を載せます。
下線をした部分は、さらに検討が必要とされたところです。
今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について(報告)
(案)
T 労働契約法制
労働契約の内容が労使の合意に基づいて自主的に決定され、労働契約が円滑に継続するための基本的な考え方として、次のとおりルールを明確化することが必要である。
1 労働契約の原則
@労働契約は、労働者及び使用者の対等の立場における合意に基づいて締結され、又は変更されるべきものであるものとすること。
A使用者は、契約内容について、労働者の理解を深めるようにするものとすること。
B労働者及び使用者は、締結された労働契約の内容についてできる限り書面により確認するようにするものとすること。
C労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に権利を行使し、義務を履行しなければならず、その権利の行使に当たっては、それを濫用するようなことがあってはならないこととすること。
D使用者は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができる職場となるよう、労働契約に伴い必要な配慮をするものとすること。
E使用者は、労働契約において雇用の実態に応じ、その労働条件について均衡を考慮したものとなるようにするものとすることとしてはどうか。
2 労働契約の成立及び変更について
(1)合意原則
労働契約は労働者及び使用者の合意によって成立し、又は変更されることを明らかにすること。
(2)労働契約と就業規則との関係等
@就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とし、無効となった部分は、就業規則で定める基準によることを、労働契約法において規定すること。
A就業規則が法令又は当該事業場について適用される労働協約に反する場合には、その反する部分については無効とすることを、労働契約法において規定すること。
B合理的な労働条件を定めて労働者に周知させていた就業規則がある場合には、その就業規則に定める労働条件が、労働契約の内容となるものとすること。
Cただし、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働契約の内容を合意した部分(特約)については、Bによるのではなく、その合意によることとすること。
(3)就業奉見則の変更による労働条件の変更
@イ 使用者が就業規則を変更し、その就業規則を労為者に周知させていた場合において、就業規則の変更が合理的なものであるときは、労働契約の内容は、変更後の就業規則に定めるところによるものとすること。
ロ 上記イの「合理的なもの」であるかどうかの判断要素は、次に掲げる事項
その他の就業規則の変更に係る事情とすること。
@ 労働組合との合意その他の労働者との調整の状況(労使の協議の状況)
A 労働条件の変更の必要性
B 就業規則の変更の内容
ハ 労働基準法第9章に定める就業規則に関する手続が上記イロの変更ルールとの関係で重要であることを明らかにすること。
ニ 就業規則の変更によっては変更されない労働条件を合意していた部分(特約)については、イによるのではなく、その合意によることとすること。
A就業規則を作成していない事業場において、使用者が新たに就業規則を作成し、従前の労働条件に関する基準を変更する場合についても、@と同様とすること。
3 主な労働条件に関するルール
(1)出向(在籍型出向)
使用者が労働者に在籍型出向を命じることができる場合において、出向の必要性、対象労働者の選定その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、出向命令は無効とすること。
(2)転籍(移籍型出向)
使用者は、労働者と合意した場合に、転籍をさせることができることとすること。
(3)懲戒
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、その懲戒が、労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とすること。
4 労働契約の終了等
(1)解雇
労働基準法第18条の2(解雇権の濫用)を労働契約法に移行することとすること。
(2)整理解雇(経営上の理由による解雇)
経営上の理由による解雇(以下「整理解雇」という。)は、使用者が使用する労働者の数を削減する必要性、整理解雇を回避するために必要な措置の実施状況、整理解雇の対象とする労働者の選定方法の合理性、整理解雇に至るまでの手続その他の事情を総合的に考慮して客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして、無効とすることとしてはどうか。
(3)解雇に関する労働関係紛争の解決方法
労働審判制度の調停、個別労働関係紛争制度のあっせん等の紛争解決手段の状況も踏まえつつ、解雇の金銭的解決の仕組みに関し、さらに労使が納得できる解決方法を設けることとしてはどうか。
5 期間の定めのある労働契約
@使用者は、期間の定めのある労働契約の契約期間中はやむを得ない理由がない限り解約できないこととすること。
A使用者は、その労働契約の締結の目的に照らして、不必要に短期の有期労働契約を反復更新することのないよう配慮しなければならないこととすること。
B「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」第2条の雇止め予告の対象の範囲を拡大(現行の1年以上継続した場合のほか、一定回数(3回)以上更新された場合も追加)することとすること。
6 労働基準法関係
@労働契約の即時解除に関する規定を労働契約法に移行することと'すること。
A就業規則の相対的必要記載事項(当該事業場において制度がある場合には明記することが求められる事項)として、出向を追加することとすること。
B労働基準法第36条等の「過半数代表者」の選出要件について、民主的な手続にすることを明確にすることとすること。
7 国の役割
@労働契約法に関する国の役割は、同法の解釈を明らかにしつつ周知を行うこととし、同法について労働基準監督官による監督指導を行うものではないこと。
A個別労働関係紛争解決制度を活用して紛争の未然防止及び早期解決を図ることとすること。
U 労働時間法制
仕事と生活のバランスを実現するための「働き方の見直し」の観点から、長時間労働を抑制しながら働き方の多様化に対応するため、労働時間制度について次のとおり整備を行うことが必要である。
1 時間外労働削減のための法制度の整備
(1)時間外労働の限度基準
@限度基準において、労使自治により、特別条項付き協定を締結する場合には延長時間をできる限り短くするように努めることや、特別条項付き協定では割増賃金率も定めなければならないこと及び当該割増賃金率は法定を超える率とするように努めることとすること。
A法において、限度基準で定める事項に、割増賃金に関する事項を追加することとすること。
(2)長時間労働者に対する割増賃金率の引上げ
@使用者は、労働者の健康を確保する観点から、一定時間を超える時間外労働を行った労働者に対して、現行より高い一定率による割増賃金を支払うこととすることによって、長時間の時間外労働の抑制を図ることとすること。
A割増率の引上げ分については、労使協定により、金銭の支払いに代えて、有給の休日を付与することができることとすること。
2 長時間労働削減のための支援策の充実
長時間労働を削減するため、時間外労働の削減に取り組む中小企業等に対する支援策を講ずることとすること。
3 特に長い長時間労働削減のための助言指導等の推進
特に長い長時間労働を削減するためのキャンペーン月間の設定、上記1(1)の時間外労働の限度基準に係る特に長い時間外労働についての現行法の規定(法第36条第4項)に基づく助言指導等を総合的に推進することとすること。
4 年次有給休暇制度の見直し
法律において上限日数(5日)を設定した上で、労使協定により当該事業場における上限日数や対象労働者の範囲を定めた場合には、時間単位での年次有給休暇の取得を可能にすることとすること。
5 自由度の高い働き方にふさわしい制度の創設
一定の要件を満たすホワイトカラー労働者について、個々の働き方に応じた休日の確保及び健康・福祉確保措置の実施を確実に担保しつつ、労働時間に関する一律的な規定の適用を除外することを認めることとすること。
(1)制度の要件
@対象労働者の要件として、次のいずれにも該当する者であることとすること。
@ 労働時間では成果を適切に評価できない業務に従事する者であること
A 業務上の重要な権限及び責任を相当程度伴う地位にある者であること
B 業務遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする者であること
C 年収が相当程度高い者であること
A制度の導入に際しての要件として、労使委員会を設置し、下記(2)に掲げる事項を決議し、行政官庁に届け出ることとすること。
(2)労使委員会の決議事項
@労使委員会は、次の事項について決議しなければならないこととすること。
@ 対象労働者の範囲
A 賃金の決定、計算及び支払方法
B 週休2日相当以上の休日の確保及びあらかじめ休日を特定すること
C 労働時間の状況の把握及びそれに応じた健康・福祉確保措置の実施
D 苦情処理措置の実施
E 対象労働者の同意を得ること及び不同意に対する不利益取扱いをしないこと
F その他(決議の有効期間、記録の保存等)
A健康・福祉確保措置として、「週当たり40時間を超える在杜時間等がおおむね月80時間程度を超えた対象労働者から申出があった場合には、医師による面接指導を行うこと」を必ず決議し、実施することとすること。
(3)制度の履行確保
@対象労働者に対して、4週4日以上かつ一年間を通じて週休2日分の日数(104日)以上の休日を確実に確保できるような法的措置を講ずることとすること。
A対象労働者の適正な労働条件の確保を図るため、厚生労働大臣が指針を定めることとすること。
BAの指針において、使用者は対象労働者と業務内容や業務の進め方等について話し合うこととすること。
C行政官庁は、制度の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、使用者に対して改善命令を出すことができることとし、改善命令に従わなかった場合には罰則を付すこととすること。
(4)その他
対象労働者には、年次有給休暇に関する規定(労働基準法第39条)は適用することとすること。
6 企画業務型裁量労働制の見直し
@中小企業については、労使委員会が決議した場合には、現行において制度の対象業務とされている「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」に主として従事する労働者について、当該業務以外も含めた全体についてみなし時間を定めることにより、企画業務型裁量労働制を適用することができることとすること。
A.事業場における記録保存により実効的な監督指導の実施が確保されていることを前提として、労働時間の状況及び健康・福祉確保措置の実施状況に係る定期報告を廃止することとすること。
B苦情処理措置について、健康確保や業務量等についての苦情があった場合には、労使委員会で制度全体の必要な見直しを検討することとすること。
7 管理監督者の明確化
(1)スタッフ職の範囲の明確化
管理監督者となり得るスタッフ職の範囲について、ラインの管理監督者と企業内で同格以上に位置付けられている者であって、経営上の重要事項に関する企画立案等の業務を担当するものであることという考え方により明確化することとすること。
(2)賃金台帳への明示
管理監督者である旨を賃金台帳に明示することとすること。
8 事業場外みなし制度の見直し
事業場外みなし制度について、制度の運用実態を踏まえ、必要な場合には適切な措置を講ずることとすること。
日本版エグゼンプションに関しては、「現行の裁量労働制は使いづらい」という経営側の発言を受け、労働側から「現行の制度の見直しから進めるべき」との意見が出されていたにもかかわらず、以前、提案された素案の内容と同様の提案されていました。
しかも、「年収が相当程度高いものであること」という年収要件については、経営側の意見を取り入れ、検討が必要なものとしています。
労働契約法を含め、幅広く議論されましたが、ここでは主に「割増率の引き上げ」と「日本版エグゼンプション」に関する議論の要旨をご紹介します。
労 長時間労働をどう抑制していくかということが共通の認識だったはず。我々はおカネがほしいわけでもないし、金銭で代替できるものではない。いかに長時間労働を抑制するかを考慮して割増率を50%に設定すれば残業をさせるよりも新たに雇い入れる法が低コストになる。経営者には、英断が必要なのではないか。柔軟な働き方を否定するものではないが、現状の裁量労働制、フレックスタイム制で十分。なぜ「自由度の高い働き方に相応しい制度」が必要かわからない。1日は24時間しかない。日常生活に反するルールは身体、家庭を破壊する。新たにつくる必要はまったくない。受注を断っていいなど仕事量の調整ができて、初めて「自由度の高い働き方」が可能になるが、そんなことができる労働者などいない。結局は、長時間労働につながり、ひいては過労死、過労自殺につながる。この部分は、すべて削除すべきだ。
使 日本のホワイトカラー労働者の生産性は低いといわれている。個人の生産性をどう上げていくかが重要。知的生産性を高めていくためにも、エグゼンプションは必要だ。過労死を生むという考え方はナンセンス。マイナス面だけを取り上げるのではなく、時間に縛られない働き方を実現することで知的生産性を上げていかなければ、国際競争力がなくなる。また、長時間労働抑制のために割増率を上げればいいというものではない。
前向きな中小企業にも使いやすい制度にしてほしい。「自由度の高い働き方に相応しい制度」は業務内容で区分すべき。年収要件は馴染まない。中小企業の社長の年収は600万円程度。高い年収で設定されたら中小企業では導入するなど言っているようなものだ。中小企業は1円のコストを下げるためにぎりぎりでやっている。それが雇用の安定につながっている。割増率を上げれば人を雇い入れるというものではない。割増率の引き上げは、長時間労働の本質的な問題解決にはならない。個別企業で労使じっくり話し合っていくことが必要だ。
労 結果として労働時間が長時間していることは間違いない。割増率を引き上げれば、労使で残業削減について話し合うきっかけになるのではないか。引き上げる場合は、提案されたような形ではなく、1本化して引き上げるべき。先ほど、コストの話が出たが労働は商品ではない。そこには人間がいて生活がある。大企業は利益を挙げている。コストなどからくる厳しさを労働者にだけ求めるのはおかしい。「自由度の高い働き方に相応しい制度」は、年収要件だけが要検討とされているが全体を削除すべきだ。この制度によって「自由度」が高くなるのは、労働者ではなく使用者だ。「自由度の高い働き方に相応しい制度」を導入しなくても現行の制度を活用することで、知的生産性を上げていくことはできる。
使 労働から生み出される価値は、そこで働いている人たちが一番よくわかっている。労働の価値を見直すことが必要だ。時間軸という片方から見るのではなく、セーフティー要素を組み合わせて「自由度の高い働き方に相応しい制度」を導入することで、時間軸以外の見方ができるようになるのではないか。
労 使用者側は労使自治を強調するが、それなら長時間化している労働時間、下がり続けている年次有給休暇の取得率、まずこれらを労使自治でなんとかすべき。現状が改善されない限り「自由度の高い働き方に相応しい制度」についての議論などできない。
この日の議論は2時間を予定していましたが、1時間30分程度で終了。これまで議論を重ねてきましたが、現在にあっても労使の意見は一向にかみ合うことはなく、意見の隔たりを埋めることはできていません。もし、このまま報告書、法案を作成するとなると、結果としてそれは公益委員の意見を取り入れた厚生労働省の作文です。そのような法案は、国会で議論するに値しないのではないでしょうか。
次回は12月21日を予定しています。
●2006年11月28日 第67回労働政策審議会労働条件分科会
この日は、「今後の労働契約法制について検討すべき具体的論点(2)」(素案)が示されました。素案の柱は、以下の3つ。
1 基本的考え方(労働契約の原則)
2 期間の定めのある労働契約
3 労働基準法関係
しかし、この日の議論は11月10日に提出された「今後の労働時間法制について検討すべき具体的論点」(素案)の内容のうち、提出されたときにほとんど議論ができなかった「企画業務型裁量労働制の見直し」「管理監督者の明確化」に多くの時間を費やしました。
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